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Vol.07 東京メトログループが
ひとつになって、
環境問題に向き合うために。May 2023

サステナビリティへの取組みが求められるいま、東京メトログループでも、鉄道をより一層環境にやさしい交通手段にするためのさまざまな取組みを行っています。地下鉄を通じた環境対策といってもイメージしづらいかもしれませんが、電車で、駅で、その取組みはあらゆるところに。今回は、一つひとつの取組みにどんな背景があり、未来の環境にどうつながっていくのか。東京メトロの環境対策を取りまとめる、サステナビリティ推進部の三上さんに話を聞きました。

CO2排出量削減や省エネ化へ、
正面から取り組んでいく

経営企画本部 サステナビリティ推進部/三上孝英

「地球にやさしいメトロに」というテーマのもと、東京メトログループでは脱炭素社会の実現や気候変動の緩和に向けて、長期環境目標「メトロCO2ゼロ チャレンジ 2050」を掲げています。省エネ対策や再生可能エネルギーを活用することで、東京メトログループ全事業のCO2排出量を2030年度までに−50%(2013年度比)に、2050年度までに実質ゼロを目指すというものです。

もとより鉄道といえば、電気を動力とし、一度に多くのお客様を運べることから、一人あたりのCO2排出量が自動車や航空機の1/4以下※1になる環境にやさしい乗り物といわれているんですね。その上でさらに、エネルギー効率に優れた新型車両の導入、列車がブレーキをかけたときに発生する回生電力の他の列車への活用、地中熱を一部施設の空調の熱源として利用するなどしています。ただそれでも、多くのエネルギーを使用して事業を展開する企業として、環境問題にもっと積極的に取り組んでいかなければと思っています。

その中で重要になってくるのが、CO2を排出しない再生可能エネルギーの活用と省エネ施策のさらなる推進です。私たちサステナビリティ推進部は、各部署の取組みを取りまとめる立場だからこそ、「地球にやさしいメトロに」の実現に向けて正面から向き合っていかないと。そのためには新しい取組みも必要で、2023年3月に国内の鉄道業界で初めて、自社の敷地外から再生可能エネルギーの環境価値を調達する「バーチャルPPA※2」を締結しました。もちろん、これまで続けてきた取組みも大事にしていきます。さまざまな環境への取組みを通して、CO2排出量ゼロという目標達成に向けて走り続けていくために。

※1 出典:国土交通省「運輸部門における二酸化炭素排出量」(当社データを除く)
※2 発電時に、環境負荷を与えるCO2を排出しない再生可能エネルギーの環境価値を、自社の敷地外から調達できるように発電事業者と契約する仕組み。「バーチャルPPA」に関する当社のプレスリリースはこちらからご確認いただけます。

第二の人生へ、
未来の
環境につなげる「車両譲渡」

環境への配慮のひとつとして行っているのが引退車両の譲渡です。車両は役目を終えると解体され、車体のアルミニウムや部品などはリサイクルされますが、一部の車両は他の鉄道会社へ譲渡され、第二の人生を走ることもあります。車両譲渡はいわば“リユース”すること。廃棄物の削減につながるだけでなく、ゼロから車両を作るよりもCO2の排出量が少なくて済むのです。

車両の譲渡先は主に国内の地方鉄道や海外の鉄道事業者で、今も現役で走っている車両があります。旧日比谷線03系の車両が、2020年度から長野電鉄と北陸鉄道で活躍しているんですよ。車両の長さが18mと両社の現状の設備に合わせやすかったことや、各社の車両更新計画とも合っていたことから譲渡が決まりました。もちろん、そのまま譲渡するのではなく、ご要望に合わせて車両の仕様調整や設計、改造工事も行います。このときは扉の凍結を防ぐヒーターや除雪装置などを搭載し、寒い土地でも走れる車両へと生まれ変わりました。
譲渡先でも、安全かつ快適にお客様を乗せてほしい。それだけでなく、長く走り続けることで車両の廃棄量は減り、新しい車両の導入を抑えることで車両を製造する頻度も減ります。その積み重ねがCO2排出量の削減につながるからこそ、最善の仕様で譲渡することは、私たち東京メトログループの大切な役割だと思っています。

▲ 長野電鉄に導入された旧日比谷線03系車両

▲ 北陸鉄道に導入された旧日比谷線03系車両

再生水による車両洗浄で、
循環型社会に貢献したい

東京メトロでは、車両の洗浄に再生水を利用しています。車両は地下のトンネルを走るだけでなく、他の鉄道会社との相互直通運転により地上区間も長く走るため、多くの土ぼこりや汚れが車体に付いてしまいます。さらに車輪まわりには油分も付くため、洗浄には大量の水が必要です。地球にとって限りある水資源を大切に使うことはもちろん、作業時の排水が環境負荷となってはならないですよね。

▲ 車両自動洗浄機

そこで、車両基地に導入したのが、イオン交換樹脂(不純物を除去する樹脂)を使用した再生水装置です。車両の洗浄や検査で使用した作業排水を直接下水に流さず、土や汚れなどの不純物をろ過。再生水装置を通して水質を改善した後、車両自動洗浄機による車両洗浄に再利用しています。2021年度には再生水の使用率が約91.6%を達成しました。循環型社会の構築に貢献できるよう、さらなる使用率の上昇を目指していきたいですね。

資源をムダにしない。
紙の乗車券を100%リサイクル

エコな取組みは車両だけでなく、駅の中にもあります。それが、紙の乗車券のリサイクルです。お客様がご使用になった乗車券は駅改札で回収された後、処理工場で裁断、溶解などの工程を経て、トイレットペーパーに生まれ変わります。完成したトイレットペーパーは各駅だけでなく、私たち東京メトロの本社でも使っているんですよ。
この取組みは2004年から始まり、2006年以降リサイクル率は100%、2021年度のリサイクル量は20t以上となっています

実は私自身、サステナビリティ推進部に配属されるまで紙の乗車券の回収後について考えたことがなく、リサイクル率が100%だと知ってとても驚きました。同じように社内外に知られていない取組みはまだまだたくさんあって。その一つひとつにスポットライトを当てることが私たちサステナビリティ推進部の使命だと強く感じています。

※ 乗車券の原料が含まれる量は5%

社員一人ひとりの意識を高め、
同じ目標に向かいたい

社内の各部署の取組みにスポットライトを当てるため、サステナビリティ推進部では社員向けのブログで情報を発信しています。ブログに取り上げることで取組みに携わった担当者のやりがいも生まれますし、同じ目標に向かう仲間の存在で頑張れることもあると思うんですよね。
これからも環境を支え、安心で、持続可能な社会の実現に貢献するためには、社員一人ひとりの意識を今以上に高めていかないと。自分たちの業務とサステナビリティがつながっていることをもっと認識してもらえるよう、ブログを通して、どんな取組みを行っているのか、どんな気持ちで向き合っているのか伝えていきたい。そして、社員の皆さんにサステナビリティを自分ごと化してもらえたらうれしいですね。

また、個人的に、廃棄となってしまうつり革や座席などの車両部品の素材を活かし、新しい商品にするアップサイクルに興味があります。東京メトログループの社員のアイデアを取り入れ、東京メトログループの魅力を伝えられるものができたらうれしいですね。他には壁面太陽光発電システム・太陽光発電ガラスも気になっています。東京メトロは地下鉄という特性から、太陽光パネルの増設に限りがあるため、駅の窓や車両基地の壁面に取り付けられれば、新たな再生可能エネルギーの活用につながるのかな、と。

サステナビリティは、今後ますます重要な課題になってきます。今だけでなく、未来の子どもたちのためにも、CO2の排出や廃棄物の削減を通して「地球にやさしいメトロに」を実現していきたい。そのためには、関連会社や他の鉄道会社との協力が必要で、私たちがその推進力になれたらと思っています。
そして最後に、読者の皆さまにこの記事を通して、鉄道に乗ること自体がエコにつながるんだということを知っていただけるとうれしいですね。

Question 教えて!環境対策のギモン

  • 駅で行っている省エネ&環境対策について教えて!
  • 東京メトロでは地下にあるという特性から、照明やエスカレーターなど多くの電気を使う設備が必要になるため、環境負荷を低減するため効率的にエネルギーを活用しています。

    たとえば…
    太陽光発電システム:地上駅の屋根上に太陽光パネルを設置し、発電した電力を照明やエレベーターなどの設備に使用しています。
    自動運転装置付エスカレーター:運転速度を微速または停止に自動的に切り替えることで、消費電力を削減しています。
    駅補助電源装置:列車がブレーキをかけるときに発生した電力(回生電力)を、装置を通して変換し、駅の設備に供給しています。

    ▲ 太陽光発電システム(南行徳駅)

    ▲ 自動運転装置付エスカレーター

    ▲ 駅の省エネルギー対策 拡大する

  • 鉄道に関連する事業以外で、環境の取組みを行うことはあるの?
  • はい、あります。廃棄物による環境負荷にも配慮した食品ロス削減のため、2022年度に家庭で余った食品を必要とされる方に届けるイベント「フードドライブ」を関連施設で実施しました。また、駅周辺の自治体と住民の方々と一緒に「駅周辺清掃活動」なども行っています。

※記事の内容は取材時点のものです。

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