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【特集Vol.18】一人ひとりが活き活きと働き、東京を走らせる力になるために。

社員一人ひとりが自分らしく働き、能力を最大限発揮できるように。2023年8月、東京メトロは「DE&I宣言」を制定しました。制定からおよそ1年経った今、どのくらい浸透しているのか、浸透の裏にどんな動きがあったのか。DE&I推進担当として現場の声に耳を傾けてきた大原さんと長田さん、そして、DE&I推進委員会のリーダーとして会社全体のDE&I推進を牽引してきた堂免さんに話を聞きました。

DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)とは
Diversity(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包摂性)の頭文字を取った言葉で、「多様性」を「受容」し、それぞれに「公平」な機会提供のもとで、互いに尊重しながら成長できる環境づくりを目指した考え方のこと。


「全社ごと化」と「自分ごと化」


(写真左から右)
人事部 DE&I推進・採用担当課長/大原 恭子
人事部 労務課 DE&I推進担当/長田 悠希
取締役 執行役員(人事部担当)/堂免 敬一

堂免:東京メトロが多様な人財が活躍する働きがいにあふれた組織づくりを実現するには、DE&Iのさらなる加速が求められてきます。その上で必要なのは、トップダウンとボトムアップの両方です。トップダウンは言わば、社員たちの背中を押すようなもの。「DE&I宣言」を制定して旗振りを行うことで、全社的にDE&Iの認識や意識の向上を図り、現状をよりプラスに持っていけるようにしているところです。
 
大原:一方でボトムアップは、社員が各種セミナーや活動に参加することで、社員それぞれがDE&Iを自分ごと化することです。東京メトロがDE&I推進を通して目指すのは「誰もが働きやすい職場風土」ですから、実現には社員一人ひとりがお互いの状況や置かれた環境を理解し、フォローし合う「お互い様」の精神が欠かせません。
 
長田:そうですね。理解してもらうためには、もっとDE&Iを浸透させていかないと。そのためにも今は、社内複業制度(※)を通じて募集した仲間と一緒に、現場の課題としてあった仕事と家庭の両立に関する情報発信の見直しや、他にも社員が安心して働けるようなお役立ち情報を発信しています。
 
※ 「社内複業制度」とは、本業の他に、職種・部門の垣根を越えて他の業務に従事する制度のこと。

男性育休をためらわない環境づくりを


堂免:大原さんや長田さんをはじめDE&I推進担当の皆さんが精力的にセミナーを開催してくれたり、トップダウンによるメッセージを発信したことで、DE&Iという言葉が全社的に浸透してきていると感じています。
とくに、男性の育児休業取得率はかなり上がっています。きっかけは、子どもの誕生した日から2週間の育児休業を有給としたことですね。2023年度の取得率は95.7%(※)で、目指すは100%です。男女ともに育休が当たり前の雰囲気となり、人事部として要員不足とならないよう配慮できれば、職場に迷惑をかけないかなどためらうことをなくすことができると思います。
 
長田:私の先輩で、車掌をしている男性社員の方も育休を取得されていました。久しぶりにお会いしたときにパパの顔になっていたんですよね。奥さんをいたわる言葉や子育てに励んでいたという話を聞いて、育休中に過ごした時間を喜ばれていたのが伝わってきてすごくうれしかったです。
 
堂免:夫婦で子育てすることで、喜びも大変さも分かち合えます。私のように男性の育休が当たり前ではなかった時代からすると、そのときにしかできない経験を男性もできるのは、うらやましいなという気持ちですね。
 
※ 東京メトロでは厚生労働省の定める育児を目的とした休暇制度を除いた①育児休業等の取得割合の算出方法から、育児休業取得率を算出しています。

▲子育てサポート企業「くるみん」に認定されました
▲東京メトロの主な制度

分かり合うこと、言葉にすることが大事


長田:男性が育休を取ることは、実は、女性の今後のキャリアにも大きく関わってきます。仕事と育児の両立には、子育ては女性がすることという偏った見方を解消し、育休後も夫婦で支え合っていくことが大事なんです。そのためにも育休期間に夫婦でこれからどう役割分担をしていくか、目線合わせをしておくことが必要です。
 
大原:そのためには、子育てや家事をパートナーといかに分担するかがカギになってきます。実際に多くの女性社員からも同じ声が上がっていたため、育休取得を検討する男性社員向けに、育休への心構えを伝えるオンライン教材を用意しました。出産・産後の身体的な負担や、そのとき家族は何ができるのか、知ると知らないでは大きく違ってきますからね。
また、育休から復帰した女性社員と上司が一緒に参加する「育休復帰者向け両立キャリアセミナー」も満足の声が高かったですね。育休社員からすれば、今何に困っているのか、将来どんなキャリアを思い描いているのか。上司からすれば、実はこんな期待をかけていたんだなど、お互いに伝え合うことで、ちゃんと言葉にして働きかけることの大事さに気づくきっかけになったようです。
 
長田:また、育休以外にも、当社には以前から不妊治療休暇や生理休暇がありましたが、その名前から取りづらいという声が上がっていました。そこで「セルフケア休暇」と名称を変え、取りづらさの解消のみならず、身体の不調時に性別を問わずに誰もが利用しやすいようにしました。

正しい情報を知ることは、相手を知ること


堂免:DE&Iは、世の中や個人の価値観の変化を汲んで、社内の制度に取り入れていくことも必要です。たとえばLGBTQ(※)は、ここ数年で世の中でも動きが見られるようになりましたが、まだまだ理解が及んでいない状況でもあります。だからこそ、今はみんなが正しい情報を知る理解浸透のフェーズだと考え、まずは人事業務を担当する社員向けにLGBTQの理解促進セミナーを開催し、当事者の方の生の声を聞く機会を設けました。
 
大原:同時に、家族の形も多様になってきている今、婚姻に関する福利厚生制度を含む各種人事制度の対象も、法律婚以外のパートナーがいる社員まで広げました。
 
長田:マイノリティという視点で言えば、障がい者の方が挙げられることもありますが、私にとっては当たり前に一緒に働く仲間ですね。当社では毎年聴覚障がいのある社員が講師になって体験型学習「手話に触れてみよう!」を開催しているのですが、自分たちの強みを活かして講師をする姿がすごくキラキラしていて、楽しそうにしているのが印象的です。
 
※ 「LGBTQ」とは、性的少数者(セクシュアルマイノリティ)の総称。

▲2023年度に開催した「手話に触れてみよう!」は約80名が受講

社員の働きがいが、東京の活き活きとした毎日に


長田:DE&I推進を経て、私自身の先入観が取り払われたように、全社員向けに行ったDE&I研修後のアンケートでも無意識の偏見を持っていたことに気づかされたという声がたくさんありました。社員一人ひとりが認められることで会社への愛が生まれ、愛があると仕事も頑張れます。まずはこの連鎖を目指していきたい。そして、多様な社員が集まることで意見の広がりや変革をもたらし、新たなサービスの提供にもつなげていきたいですね。
 
大原:今は同僚たちとも「お互い様の精神だよね」と言い合ったり、アイデアを自由に出し合ったり、みんなで新しいことに挑戦しています。思ったことを素直に口に出せる、DE&I推進の目指すところに進んでいるのかな、と。
こうしてそれぞれの職場で社員一人ひとりの能力が最大限発揮できるようになることで、確かな安全・安心を提供しながらも、企業としてさらなる価値の創出を目指し続けていけると思います。
 
堂免:価値観の変化は、この先の未来の当たり前になっていきます。それは東京メトロにおいても同様で、どんなバックグラウンドを持っていても、社員の誰もが活躍できる、やりがいや生きがいを持って働ける環境を作っていくことが我々人事部の使命です。社員が活き活きと働けることが東京に集う皆様の活き活きとした毎日にもつながっていきますので、DE&I推進をこれからも進め続けていきます。

※記事の内容は2024年7月の取材時点のものです。

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