なぜ東京メトロが使用済み食用油を回収するの?
皆さんこんにちは!東京メトロnote編集部です。
2024年6月28日(金)~6月29日(土)にかけて、浦安駅にて使用済み食用油回収イベントが開催されました。
そこで今回は、なぜ東京メトロが使用済み食用油を回収するのか…そんな疑問にお答えするとともに、イベント当日の様子をお届けできればと思います。
イベントの企画・運営に携わった社員2名に話を聞きました!
イベントを通じて「SAF」をもっと知ってもらいたい
三上:皆さんはSAF(Sustainable Aviation Fuel(以下、SAF))(※1)をご存じですか?SAFとは、化石燃料以外を原料とする持続可能な航空燃料のこと。使用済み食用油の SAFへの再利用を通じて脱炭素社会の実現を目指す取組みとして、当社は2023年12 月に「Fry to Fly Project」に賛同・参加(※2)しました。本イベントは、その取り組みの一つです。
本多:これまでも車内ビジョンやSNSなどで、SAFの重要性や「Fry to Fly Project」について発信してきましたが、まだまだ認知度が低いのが現状。少しでも多くの方にSAFについて知ってもらい、持続可能な社会の実現を目指して行きたいという思いから、開催に至りました。
※1 SAFとは、化石燃料以外を原料とする持続可能な航空燃料で、原料が100%の使用済み食用油の場合、原料収集からSAFの製造・燃焼までのサプライチェーン全体で、従来の航空燃料と比較してCO2排出量を約80%削減することが可能です。実際に回収された使用済み油がSAFとして利用されるのは2025年以降の計画であるため、それまでの間はバイオディーゼルなどの原料として利用されます。
※2 Fry to Fly Project の詳細はこちらをご確認ください。
地下鉄と航空燃料…?「Fry to Fly Project」に参加したきっかけとは
三上:これまで廃棄していた使用済み食用油をSAF原料として提供することで、東京メトログループの「Scope3」(※3)削減につながるだけでなく、資源循環型社会の実現として同じ運輸業界の脱炭素化に貢献できることに意義があると考え、「Fry to Fly Project」に参加しました。
その取組みの例として、グループ会社である株式会社メトロプロパティーズが運営する飲食店舗等の使用済み食用油を提供しています。東京メトロの駅ナカそば屋「めとろ庵」でかき揚げや天ぷら、カツ丼のとんかつを揚げるために使用した油もその一つです!さらに、2024年4月からはグループ会社である株式会社メトロライフサポートが運営する東京メトロの社員食堂などからも提供を開始しています。
本多:【地下鉄】と【航空燃料】が結びつく意外性をバネに、一般の方々に関心を持っていただきつつ、企業としても環境負荷低減の社内意識醸成にも繋げていければと思いました。また、1日あたり約652万人(2023年度)の方々にご利用いただく鉄道事業者としても、その豊富な接点を活かしてSAFの重要性や「Fry to Fly Project」について発信し認知を広げていくことは、大きな意義があると感じています。
※3 サプライチェーン排出量のうち、Scope1(自社での直接排出量)とScope2(自社での間接排出量)以外の「その他の間接排出量」を示す指標のこと。廃棄物を処理する際のCO2排出量はScope3に該当する。
今回のイベントのこだわりは?
本多:より多くの方に興味をもっていただけるようなブースづくりに努めた点です。使用済み食用油の回収のほかに、「Fry to Fly Project」の事務局である日揮ホールディングス株式会社にもご協力いただき、SAF製造過程のVR体験を設けたり、当社の環境の取組みに関するクイズコーナーを用意して、使用済み食用油をお持ちいただかなくても参加できるようにしました。クイズコーナーでは、東京メトロが環境にやさしい交通手段であることを知っていただけるよう、CO2排出量実質ゼロで運行している路線や膜屋根(まくやね)などの省エネ設備を紹介しました。
また、お子様にも参加いただけるよう、本物の制帽を被りながら撮影できるフォトスポットも設け、活気あるイベントになりましたね!
三上:使用済み食用油をご持参いただいた方には、感謝の気持ちとして東京メトログッズをプレゼントしました。当社が主催するイベントに実際に参加いただくことで、「わたしたちも環境にやさしい活動に参加している」と実感してもらえたら嬉しいなと。
「SAF」が広まった先に期待すること
三上:「Fry to Fly Project」事務局の担当者によると、私たちが車内ビジョンや駅コンコースビジョンで発信している内容を見て「Fry to Fly Project」に参加される企業もあったそうです。新たな協議先でも「よく見るので気になっていた」と話が進めやすいのだとか。「Fry to Fly Project」の輪の拡大に貢献できているようで嬉しいですし、今後もさらに広げていきたいですね。
本多:家庭で出た使用済み食用油を「ただのゴミ」として廃棄している人もいるかと思います。また、今回のイベントで期限切れの油をお持ちになる方が多く、ご家庭に眠っている期限切れの油は他にも沢山存在するのではないかと感じました。1人ひとりに「使用済み食用油も資源」と意識していただき、回収に協力してもらうことで、国内で運用している飛行機の運用をよりクリーンにすることができ、環境負荷低減にも繋がっていくと思います。
今後はどんなことに取り組んでいくの?
三上:今回のイベントは、東京メトロとして初めての「使用済み食用油回収イベント」ということでパイロット的にサステナビリティ推進部単独で開催しました。そして、使用済み食用油の回収だけでなく、東京メトロの環境に関する取組みに関するクイズコーナー等を設けることで、お子様から年配の方までたくさんの方に興味を持っていただけることがわかりました。今後は各部と協力し、東京メトロで実施する様々なイベントの中で、使用済み食用油の回収や東京メトロの環境に関する取組みをPRし、訴求するきっかけを増やしていければと考えています!
また、他企業や行政と協力したイベントなどを通じて、沿線地域と連携しながら「SAF」や「環境にやさしい交通手段の東京メトロ」を広めていきたいです。
本多:東京メトロは、環境に配慮した車両の導入、駅照明のLED化、不動産物件の省エネ化、再エネ電源の活用など、これまでも様々な取り組みを行ってきました。一企業として目標を掲げて取り組んでいくことも重要である一方、地球に生きる1人として、日々の生活でできることに取り組んでいくことも大切だと思っています。「家庭から出た使用済み食用油の回収」「環境に優しい交通手段の利用」など、1人ひとりが環境に優しい行動を意識できるよう、引き続き啓発活動を進めていきます!
おわりに
note編集部のメンバーも、捨て方に困っていた使用済み食用油をイベントに持っていきました。無事東京メトログッズをゲットしたのち、クイズにはきちんと全問正解して満足気に帰宅。「ちょっといいことしたかも!」と少し嬉しい気持ちになれたので、はじめのうちは自分を褒めるくらいの感覚で、できることから始めてみてもいいかもしれませんね。
※記事の内容は2024年8月取材時点のものです。