
社内業務のDX推進!~生成AIを活用した社内向けヘルプチャット~
皆さんこんにちは!東京メトロnote編集部です。
社内業務のDX推進を目的とし、2024年10月下旬から、生成AIを活用した社内向けヘルプチャットシステム(以下、「社内ヘルプチャット」)を導入しました。
DX推進に奮闘する担当者に、導入の裏側と今後の展望を聞いてみました!
●プレスリリース
業務効率化を目指したDXの取り組み
業務を実施する際、知りたい情報がどこに保存されているのかがわからない…
一方で質問を受ける側は、問い合わせ対応に時間を取られてしまう…
このような社内の課題をDXで解決すべく、東京メトロでは2024年10月下旬にRAG技術(※1)を用いた生成AIチャットボットを導入しました。
(※1)生成AIのモデル構築時に学習した情報以外の外部情報を検索し、その情報を基に回答を生成する技術

社内から数多く声が上がったこの課題に対してどのように取り組んだのか、社員に話を聞きました!
インタビュー

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(左から右)
デジタルイノベーション推進部/Nさん
・2022年入社
・ITガバナンス業務を担当したのち、2024年度から社内ヘルプチャットの導入業務に携わる。
デジタルイノベーション推進部/Hさん
・2015年入社
・鉄道統括部(現財務部)にて調達制度の整備や調整を担当したのち、2019年度からDX推進業務に携わる。
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導入した経緯
―――社内ヘルプチャットを導入した経緯を教えてください。

(Hさん)私たちの所属しているイノベーション推進担当では、社内のDXを推進しています。2020年度からDX推進体制の構築を進めており、2021年度にはさらなる業務効率化を目指して各部署に業務課題を挙げてもらいました。その中で、DXを活用して解決できそうなものを選定していったのですが、そのうちの1つが「問合せ対応の業務効率化」だったんです。
(Nさん)主に社内の事務業務で不明点や疑問点が出てきた場合は、イントラネット上で閲覧できる規程類やマニュアル等を紹介する、もしくは関係する部署へ問い合わせを実施する、という対応が基本となり、特に後者の問い合わせ対応には、依頼元と依頼先の双方で時間がかかってしまうケースが多くありました。
そこで、人事や契約関係の問い合わせ対応に生成AIチャットボットが活用できないか検証してみたところ、一定の効果が見込まれたんです。この結果をもとに、改めて各部署で活用できそうな場面がないか調査したところ、想像以上に多くの部署から使ってみたいと声があがり、本導入に動き出しました。
社内ヘルプチャットの特徴
―――どんな特徴を持ったシステムなのでしょうか。
(Hさん)今回導入した社内ヘルプチャットは、生成AIとRAG技術を駆使して社内文書情報から該当情報を検索し、回答を生成して提示してくれるシステムです。FAQサイトのような1問1答形式とは異なり、社員を相手に相談するような感覚で使えることが特徴です。質問する側の意図をくみ取って回答してくれるんです。

(Nさん)また、問い合わせを受ける側は、マニュアルなどの社内文書情報を社内ヘルプチャットに登録する必要があります。このときに役立つ機能として、文書を自動的に構造化処理できる機能を付加しました。これは、たとえばフロー図などの図表を、生成AIが識別できる文字列に変換する処理のことをいいます。
各部が作成している業務マニュアルを確認していったところ、図表を多く使っていることに気が付きました。文書を登録する際に、たくさんの図表を手作業で文字にするのは煩雑ですよね。これを自動化することで登録の手間を減らし、情報のアップデートを簡単に行ってもらえるようにしました。

(Hさん)登録している内容を最新の状態にしておかなければ回答の精度が落ちてしまうので、ここはこだわったポイントですね。
また、社内ヘルプチャットを使った後に評価結果を入力してもらうようにしています。社員による評価も参考に、回答精度や導入効果を検証していきたいと思っています。
―――大変だったことはありますか。

(Nさん)私自身、新しいシステムの導入に初めて携わり、機能・費用・セキュリティなどの様々な要素がある中で、どのような設計にすべきか悩みました。自分なりに意見をまとめて、上司や取引先に相談しながら取り組むことで、バランスのとれたサービス設計にすることができたと思います。
(Hさん)「生成AIを用いたチャットボット」というとシンプルですが、裏側にはたくさんのサービスが組み合わさってできています。たとえば自動構造化処理ひとつ取っても、文書を登録する場所をどうするか、どういうルールで登録するかなど、検討すべきことが無数にありました。各サービスで何ができるのか、どうすれば回答精度が上がるのかを一つひとつ検討し、取引先と認識をそろえながら進めていくことが大変でしたね。時には一般的な生成AIサービスを駆使して調査したこともありました。
―――社員が使うにあたり気を付けていることは?
(Nさん)画面を工夫し、直感的に使えるようにしました。また、生成AIを活用する際は、ハルシネーション(※2)が起こりうること等の特性を理解できるよう、2023年度に「生成 AI サービス利用ガイドライン」を策定し、生成 AI の利活用を推進していく上で必要となるガバナンスの整備も実施しています。
(※2)人工知能(AI)が事実に基づかない情報を生成する現象


(Hさん)そうですね、生成AIを正しく理解したうえで活用できるような研修を実施していきます。また、生成AIが正しい回答を返すためには、正しいプロンプト(※3)を入力しなければなりません。こちらも定期的に周知していきたいと思っています。
(※3)ユーザーから生成AIへの質問や指示のこと
おわりに
―――今後の展望をお願いします。
(Hさん)社内ヘルプチャットの導入により、社員による業務生産性が向上し、それに伴って生み出される時間を用いてデジタル技術を活用した新たな業務変革や企業価値が創出されることを期待できます。
(Nさん)今後も、東京メトロでは積極的に生成AI技術を取り入れ、通常の資料作成業務やシステム・アプリの内製開発におけるコード生成業務等を効率化し、さらなるお客様サービスの向上につなげてまいります!
※記事の内容は2024年12月の取材時点のものです。