見出し画像

【特集Vol.05】みんなの安心も、ひとりの快適も、支えるアプリを。

「地下鉄は複雑で乗り換えが難しい」、「時間がかかってもいいから、座れそうな電車に乗りたい」。一口に移動といっても、求めるものは人それぞれ。また、新型コロナウイルスの感染拡大以降は、列車の混雑状況が気になる方も多いのではないでしょうか。
そんな、お客様のニーズに応えるべく、2020年8月にリリースされたのが「東京メトロmy!アプリ」(以下、my!アプリ)です。今回はたくさんのmy!アプリの機能の中でも、列車内の混雑状況をタイムリーに知らせてくれる機能について、開発の裏ではどんな取組みや試行錯誤があったのか。さらには担当者おすすめの便利なmy!アプリの活用方法まで、開発に携わった2人に話を聞きました。


今の時代だからこその“安心”を届けるために


鉄道本部 運転部 運転課/吉野 秀行(写真左)
デジタルイノベーション推進部 デジタルサービス担当/七條 加寿郎(写真右)

七條:my!アプリの前身にあたる『東京メトロアプリ』では、列車の遅延が増えた際に、何分遅延しているかお客様に表示できない課題がありました。現在では99分までの遅れであれば表示されますが、このような改善や新たな機能追加を目的に開発をスタートしていたんです。ただ、開発途中の2020年から、新型コロナウイルスの感染拡大が始まって……。

吉野:当時の社内では、「今の時代だからこそ、お客様が求めている“安心”とは何だろう」という話があがっていました。たくさんの意見が交わされた中で、最終的に「列車内の混雑情報を、可能な限り正確かつスピーディに発信すること」という結論になったんです。そこで「混雑率をどのように集計し、どの媒体で発信するのがベストか」というアイデアの社内募集がかかりました。私が所属する運転部では、ダイヤ改正の際に混雑情報を参考にすることもあり、知見は持っています。そういった背景から、混雑率の集計方法やmy!アプリへの列車別・号車別の混雑状況の表示までを提案し、採用されることになりました。

到達した“4秒”というスピード


▲ ホーム端に設置されたデプスカメラ

吉野:もともと2018年頃から、リアルタイムで列車内の混雑状況を計測するテストはスタートしていました。当時、東西線が首都圏で最も混雑している路線だったため、お客様の分散乗車や時差通勤を促進したいと考えていたからです。ただ、計測用のカメラが列車内の人の頭をカウントするタイプだったので、混雑率が高くなるとお客様同士の頭が重なり、正確な人数把握ができませんでした。私が混雑状況の計測に携わるようになった2019年時点は、そのような状況でしたね。

七條:機能の正確さやスピーディさは、お客様に安心や便利さを感じていただくために目指すものです。だからこそ、乗車しているお客様の数がきちんとカウントできなくては、my!アプリの機能として実装することは難しい、と。

吉野:混雑率の算出スピードも大きな課題でした。テスト時では、駅に設置したカメラが通過する列車内を撮影し、混雑率を解析〜算出するまで5分必要でした。東京メトロ線は駅間が短い区間が多いため、5分もかかっていてはmy!アプリに表示される前に、混雑状況を見たい列車が次の駅に到着してしまいます。もっともっと解析スピードを上げなければいけない。しかし、その壁は想像以上に高く……。正直、社内から「本当に実現できるか?」という意見も聞こえてくるほどでした。そんなとき、物体の奥行きを判断できる「デプスカメラ」と出合ったんです。さらに、人工知能(AI)も導入したことで高速の画像解析が可能になり、最終的に算出スピードは現在の“4秒”未満にまで到達しました(※)。 当初は30秒未満を目標にしていたので、まさに大どんでん返しでしたね。

※ なお、お客様がアプリ上でご確認するには、当該列車が動き出してから最短25秒ほどかかります。

また、社内の協力も必要でした。私自身、ダイヤや運行情報のことは知っていても、my!アプリに落とし込むための知識がなく、システム関係でわからないことは七條さんにすぐ質問していました。カメラのテストでも、デプスカメラなどの天吊り工事に関しては電気部に、設置の際に開けた穴の修復は工務部に依頼しました。他にもAIや混雑予測に必要なデータ収集には車両部の協力が欠かせませんでした。また、現在my!アプリでは混雑レベルを「肩が触れ合う程度」など、わかりやすく感覚的に表示しています。その感覚的な部分とデプスカメラで計測したデータを照らし合わせるために、体感した混雑をその場で入力できる専用アプリを運転部のアプリ開発チームで自作し、駅社員にも列車に乗ってもらって、そのアプリに入力を依頼しました。もちろん自分たちも乗ったのですが、人によって感覚の差はあるので、できるだけ多くの意見が必要だったんです。とにかく、いろいろな人に協力をお願いし、チーム一丸となって取り組んだ開発期間でした。

お客様のリアルな声で、よりよいアプリへ


吉野:my!アプリ公開以降、お客様センターに寄せられる声はもちろん、SNS上での意見もチェックしています。実際に「混雑情報を見て移動したら、座ることができた」などの投稿を見かけると、とてもうれしいですね。ただ、my!アプリでは混雑の予測情報も見ることができるのですが、ときどき実態とズレていたというご意見もいただくので、真摯に受け止めています。
今後は、混雑情報を座れる情報として捉えていただくなど、よりお客様にポジティブな印象を持っていただけるとうれしいですね。

七條:お客様の声は、my!アプリのTOP画面にも活かされています。当初my!アプリでは、路線図のページに行くには、メニューから選択する必要がありました。しかし、SNSなどで「最初に見たいのは路線図」というご意見を多く見かけたんです。そこでお客様に求められているのであればと、路線図を含めた一部の画面を、TOP画面として設定できるようにしました。他にもありがたいことにポジティブな意見をいただくことが多く、とてもやりがいを感じますね。吉野さんとも「今度はこんなご意見をもらったよ」と、よく情報交換をしています。

「わたしだけ」にぴったりの、活用方法を


七條:my!アプリは「多種多様な価値観と文化が溢れる東京に集う一人ひとりの移動・ビジネス・生活を支え、都市の活力を高めるため」のアプリにしようという意見から、my!=「わたしだけの」というコンセプトが生まれました。そのコンセプトを元に、自分の歩行速度を設定できたり、混雑を避けたルートを選べたりといったカスタマイズ機能が実装されたんです。だから、お客様一人ひとりに寄り添った移動をサポートできるところも、my!アプリの魅力の一つだと考えています。

たとえば、これから新生活を迎える学生さんや社会人の方だと、まだ東京メトロの駅名や近くのバス停の名前をご存知ないかもしれません。そこでおすすめなのが、現在地と目的地の住所を入力する、Door to Doorでの経路検索です。本来、お客様が求めている情報は駅から駅だけではなく、現在地から目的地までのルートですよね。希望する移動手段も電車・バスだけでなく、タクシーや徒歩の場合もあると思うので、いずれのルートでも検索できるようにしています。ぜひ試してほしいですね。

吉野:私は就活生のときに、はじめて都心の朝ラッシュを経験しました。押しつぶされそうな程の混雑には驚きましたし、移動するだけでとても疲れた記憶があります。当時my!アプリがあれば混雑を回避できるルート検索や、混雑予測を活用できたのに……と考えたこともありますね。とくに東京に慣れていない方には、ぜひ活用いただき、ご自身にとっての快適な移動をかなえてほしいです。

七條:おかげさまで累計160万ダウンロード(※)を超え、多くのお客様にご利用いただいていることには感謝しかありません。自分好みにカスタマイズして、東京を便利に、楽しく移動していただけるとうれしいです。今後も鉄道会社ならではの、精度の高い情報を提供していきますのでご期待ください。

※ 2023年2月時点

東京メトロmy!アプリの機能を紹介!


1. 列車詳細情報

運行状況画面の列車アイコンから、列車混雑状況や到着時刻のほか、乗換先路線の列車位置の確認が可能。

2. 経路検索

移動手段から検索方法、歩行速度、徒歩区間(短さや雨に濡れないルートなど)や自転車を漕ぐ速度まで、お好みで自由にカスタマイズ。

3. 運行情報通知

路線や曜日・時間帯を設定すれば、必要な運行情報を自動でお知らせ。



【教えて!東京メトロmy!アプリのギモン】

Q. 東京メトロmy!アプリには、他にどんな機能があるの?

A. 都内のイベントをご案内する「東京を楽しむ」や、乗車券+観光施設のチケットからタクシー・カーシェアなどの移動サービスをご案内する「東京を便利に」といったコンテンツをご用意しています。

▲ 「東京を楽しむ」の画面イメージ

Q. 休日のおでかけで、おトクな使い方はあるの?

A. たとえば東京メトロ24時間券をご利用のお客様は、のりかえ検索で「東京メトロ優先検索モード」を使って東京メトロ線をメインに利用する移動経路を選択することで、フル活用して移動することができます。

※東京メトロ「各種一日乗車券」の詳細はこちらからご確認いただけます。


※記事の内容は2023年3月の取材時点のものです。

東京メトロに関する話題や情報を発信しています。ぜひフォローお願いいたします!