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【特集Vol.08】いつもの駅を、自動販売機から新しく変えていく。

普段、東京メトロの駅構内で、何気なく見かける自動販売機やコインロッカー。最近ではモバイルバッテリーレンタル機や、鍵の受け渡しができるボックスなども登場し、どんどんバリエーションを広げています。一方でそんなサービスの裏側には、東京という街の多様なニーズに応えるために奔走する、担当者たちの姿がありました。
そこで今回は自動販売機や貸出型汎用自販機(※)の設置背景を中心に、東京メトロと、ともに業務に携わるメトロコマースそれぞれの担当者に話を聞きました。

※ 貸出型汎用自販機とは、2021年12月にスタートした自動販売機の新しいサービスです。メトロコマースで設置した自動販売機を月単位で貸し出し、出店者様は機材を準備することなく、東京メトロの駅構内での商品販売にご利用いただけます。


安全と便利のバランスを、お互いに支え合う


東京地下鉄株式会社 都市・生活創造本部 流通・広告事業部/沼倉 秀平(写真左)
株式会社メトロコマース リテール事業本部 オートサービス事業部 /石塚 真希(写真右)

沼倉:東京メトロの駅構内では、空きスペースに自動販売機などを設置して活用しています。サービス導入に際する我々東京メトロの役割は、駅構内をご利用されるお客様の通行の妨げにならないかなど、安全面での社内確認が大きいです。とくに駅構内のお客様の数は、ラッシュの時間帯や近隣でのイベント開催などによって大きく変動するため、ピーク時でもお客様の通行の邪魔にならないかを考慮しています。他にも、駅構内には自動販売機以外にもさまざまな設備があることから、それぞれが支障をきたさないように注意することも必要です。どんなときでも鉄道事業がスムーズに行えるように、石塚さんたちと協力してよりよいサービスの提供を目指しています。

石塚:メトロコマースでは、主にサービスの企画や運営を担当しています。多くのお客様に満足いただける便利なサービスを考えつつ、安全面についても企画段階から意識します。また、社内外の関係各所への承認依頼や調整を担当する沼倉さんたちと、連携をしっかり行うことも大切です。スピーディーな設置を行うためにも、こまめなやり取りを心がけていますね。

現場にこそ、設置や運営のヒントがある


石塚:自動販売機の設置や運営を行う上では、「なぜその場所で、その商品を展開するか」の根拠となる売上データが必要です。当社では、自動販売機を設置している取引先様に毎月ヒアリングを行い、売上データをもとに人気の高いカテゴリ・ヒット商品などがどういったものかを確認します。好調な商品は他社様にもプッシュし、お客様により喜んでご利用いただけるように心がけています。

ただ、売上データだけでは見えないことが、現場を巡回することで見えてくることもあります。「この駅の自動販売機、一台だけ売上が落ちているな」と思って現場に行くと売り切れが多く発生していたり、販促POPが新商品のものになっていなかったりすることも。対応としては補充頻度や商品配列を取引先様と見直したり、新しい販促POPへの交換依頼を行います。他にも、駅の周辺環境や客層を実際に確認すると、どんなサービスを導入し、どう運営するべきかが分かってくるんです。周囲にコンビニがない駅では、その代替としてお菓子が売れます。居酒屋が多い場所では、意外にもアイスの売れ行きがよいですね。

沼倉:メトロコマースから売上データは毎月、多いものでは毎日共有してもらい、業務に活用しています。たとえば、自動販売機などの設置に関する情報の共有を駅に行うときに、データがあるかないかで駅の担当者も「それほどの売上になっているのか」など、ポジティブに捉えていただけることも。

もちろん、私を含む東京メトロの担当者も現地の確認は行います。巡回をしていると、新しい自動販売機などの前で、足を止めているお客様を多く見かけます。地下鉄の駅構内は、地上と比較して空間や視界に入る情報が限られているので、目に留まりやすいのかもしれません。そうやってサービスに注目していただきやすいのは、駅構内ならではの強みだな、と。

時間や場所の制限を、アイデアで超えていく


▲ 日本橋駅に設置されている貸出型汎用自販機

石塚:新しいサービスでとくに好評なのが、貸出型汎用自販機です。クレープや焼き鳥、ハンカチまで、幅広い商品を基本的にひと月ごとに入れ替えて展開しています。最近では、おせんべい屋さんや海苔屋さんにもご出店いただきました。
導入のきっかけは、自動販売機の設置までにかかる時間や、設置できる場所に限りがあるという課題を解決したいと考えていたこと。何より出店者様に、東京メトロ駅構内での販売や、販売経路の拡大に気軽にチャレンジしていただきたかったんです。そこで、何かよいアイデアはないかと悩んでいたとき、当社の別部署が運営・管理をしているポップアップショップがヒントになりました。入れ物だけを先に用意して、月ごとに中身を入れ替えていけばいいんだ、と。そうすれば一から設置する場合と比べて、時間の短縮や販売場所の確保につながると考え、導入することになったんです。月替わりで商品が変わる楽しさはポップアップショップの、時間を気にせず購入できる点は自動販売機の強みが活きています。

沼倉:はじめて企画の話を聞いたとき、とても柔軟性があって面白いアイデアだな、と感じました。通常の自動販売機では、決まった商品しか販売できませんし、別の商品を販売するなら機械ごと変える必要があります。何より、お客様に毎月異なる商品を楽しんでもらえるのがいいですよね。今の時代、お客様のニーズもどんどん多様化し、移り変わるスピードも速くなっていますので、そういった意味でも魅力的です。

石塚:一方で、導入までには課題もありました。たとえば、貸出型汎用自販機はキャッシュレス決済のみに対応しており、リーダー端末の機械と自動販売機本体が別々の機材となるため、不具合が生じないために何度もテストを行いました。また、導入直後はまだ我々も機材の操作に慣れておらず、取引先様のご質問にその場ですぐに回答できなかったことも……。その後はご意見をもとに、よりよい対応ができるよう常に改善を行っています。

● (株)銀座花のれん:揚げ煎餅

● (有)鳥徳:鰻の蒲焼

いつもの駅を、もっと楽しく、便利に


沼倉:自動販売機以外のサービスでも、まだまだできることがあると感じています。現在、イベントやライブが復活したり、国内外から観光目的のお客様も多くいらっしゃるなど、新型コロナウイルス感染症拡大以前の状況に戻りつつあります。そんな中、たとえばコインロッカーの台数をさらに拡大していくことで、駅をもっと便利にご利用いただけるはずです。
また、東京は日本だけでなく、世界各地からさまざまなトレンドが集まってくる都市。そんな東京で事業展開している東京メトロだからこそ、もっと楽しく、もっと便利な体験をお届けできると信じています。今後も新しいサービスの導入を図るなど、駅の価値をもっと高めたり、お客様の生活をより豊かにできるような取組みを行っていきたいです。

石塚:沼倉さんのご意見もそうですし、東京には古きよき下町や、ものづくりの文化があります。そういった面での東京らしさも、自動販売機をはじめとしたサービスから伝えていきたいですね。
これからも東京の魅力やお客様が知らないような新商品の発信を、私自身楽しみながら積極的に行っていきますので、ぜひご利用いただきたいです。また、お客様のリアルな声はとても大切なので、「こんな商品やサービスがあったらいいな」というお声も参考にしたいと思います。


【教えて!自動販売機のギモン】

Q. 貸出型汎用自販機を、もっと便利に活用する方法ってあるの?

A. 商品によってはお渡し用の袋が同梱されているものもあり、お土産などを買い忘れたときや、少し遅い時間でもご活用いただけます。守半海苔店では、こどもの日や母の日など、季節によって変わるギフトセットを販売していました。

▲ (株)守半海苔店

Q. 東京メトロの自動販売機は、大体1日どれくらいの人が利用するの?

A. 東京メトロ駅構内で1日に約10万人、東京ドームの収容人数の2倍近くの方にご利用いただいています。ちなみに、1台あたりの平均売上が一番高いのは、半蔵門線渋谷駅です。


※当記事に掲載された商品には、現在お取り扱いのないものもございます。
※記事の内容は2023年6月の取材時点のものです。

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