【特集Vol.16】東京マラソンで案内する、いつもの安全と非日常体験。
2024年3月3日(日)、東京がまたひとつになる――。38,000人のランナーが出走する「東京マラソン2024」が開催されます。東京マラソンはアボット・ワールドマラソンメジャーズ(AbbottWMM)にカテゴライズされるなど、ボストン、ロンドン、ベルリン、シカゴ、ニューヨークシティと並ぶ世界6大マラソン大会の一つです。そんな世界規模のマラソン大会の運営は、多くの裏方の人たちによって支えられています。
地上では大規模な交通規制が行われる中、地下ではいつも通りの安全・安定運行を実現する東京メトロ、正確な計時計測でタイムを刻むセイコータイミングチームなどの活躍なくしては、東京マラソンの成功はあり得ません。東京マラソンの舞台裏を支える人たちの素顔を知るべく、人気ランニング×コメディ系YouTuberのたむじょーさんが、東京メトロ日本橋駅駅社員の肥田野さん、セイコータイミングチームの内藤さんに話を聞きました。
“みんな”が東京を安全に走れる環境整備を
たむじょー:東京マラソンを地下から支える東京メトロは、「東京を走らせる力」をグループ理念として掲げていますよね。38,000人のランナーはもちろん、ランナーを応援する人が首都・東京を駆け巡る混雑の中で、普段と変わらない安全・安定運行を提供するために心がけていることはありますか。
肥田野:ランナー、ランナーを応援する方々、そして電車の全てが東京を安全に走れる環境整備を心がけています。お客様がいつも通りに東京メトロ線をご利用いただけるのと同時に、沿道で応援される方に的確なご案内を行えるよう努めています。
沿道応援の安全・安心を確保するためには、お客様を混雑している出口に案内しないことが非常に重要です。地上で交通規制が行われていることもあり、お客様を同じ出口に案内してしまうと混雑が悪化する原因にもなります。駅社員に支給されている業務用の携帯端末で各出口の混雑状況をリアルタイムに社員間で共有して、臨機応変に案内する出口を判断しています。
たむじょー:駅社員の方は、応援のコースを把握しているのでしょうか。
肥田野:はい、事前にみんなでコースを勉強して当日に臨みます。「このポイントにはランナーが何時ごろに来ますか」といったお問い合わせも多いので、そうした質問に対応できるよう準備しています。
たむじょー:僕も大学4年のときに東京マラソンに参加した同期を沿道で応援したのですが、あるポイントで同期が走っている姿を応援したら、その後は次のポイントに移動していましたね。すぐに乗り換え経路や電車の時間を調べて、移動する形で応援していました。もしかしたら、駅構内でお会いしていたかもしれませんね(笑)。当時も沿道は応援する方でいっぱいでした。
肥田野:複数のポイントをまわって応援される方は多いので、東京メトロでは「追っかけ応援団」という応援マップを作成しています。たとえば「サブ4(4時間以内に42.195kmのフルマラソンを完走すること)のペースならどの駅を何時に通過するか」など、東京メトロを使ってスムーズに応援いただくためのマップです。
たむじょー:それは初めての方でも安心して応援を思いっきり楽しめますね!大会が開催されるにあたってはどのようなことを心がけていますか。
肥田野:とにかく分かりやすい案内を心がけています。東京マラソンの情報は紙媒体で渡すことも多いのですが、意外と喜ばれますね。携帯電話だと画面範囲が限られますが、紙だと俯瞰して見られるのでご好評をいただいております。
たむじょー:大会当日の混雑状況によっては、チームの連絡にも必要な携帯電話などの電波がつながらないこともありますよね。セイコータイミングチームは、東京マラソン当日の運営においてどんなことを心がけていますか。
内藤:当日の交通規制の影響で、限られた時間でコース上の機材を設置しなければならないため、チーム内でお互いに先読みをして行動することを心がけています。混雑している状況でも作業が変わることはないため、当日は基本的にタイミングチームで連絡は取り合いません。連絡がなくても作業が進むように準備をし、イレギュラーな事態が起きたり、作業が完了したときにだけ情報共有します。
たむじょー:まさに正確な計時計測を行うプロフェッショナルという感じですね!
東京マラソン当日は
1年でもっとも緊張感ある1日
たむじょー:東京マラソン2024には、僕もランナーとして初めて参加します。当日の雰囲気はいつもと違うのでしょうか。
肥田野:やはり東京マラソンの日は緊張感があります。いつもご利用いただくお客様に加えて、東京メトロ線の利用に不慣れなお客様もたくさんいらっしゃいます。「今日も安全に1日を終えるぞ!」といつも以上に気合いも入りますね。
たむじょー:日頃から何万人もの利用者の方がいると思いますが、年間で一番忙しい日はいつですか。
肥田野:私が勤務する日本橋駅は、東京マラソンの日が一番混雑します。東京マラソンはトップランナーだけの大会とは異なり、市民ランナーの方も大勢参加しますし、1日がかりのイベントなので盛り上がりも忙しさも段違いですね。
たむじょー:東京マラソンはそれくらい規模が大きい大会なんですね!過去にイレギュラー対応が発生した経験などはありますか。
肥田野:実は2023年の東京マラソンの開催日は「戌の日」で、安産祈願の日でした。コースに近い水天宮前駅では安産祈願のためにご利用されるお客様も多く、駅社員の数をいつもより増やしてご案内しました。東京マラソンは非日常を体験できる大きなイベントですが、普段通りのご利用を望まれるお客様への影響を最小限に留める配慮も重要です。
内藤:セイコータイミングチームでは、これまで計時計測に影響が出るようなイレギュラーは発生していません。ただ、2019年の東京マラソンは天候が雨だったこともあり、スタートの紙吹雪が機材にへばりついて大変でしたね。寒い中、手で一生懸命取ったのを覚えています。
東京の魅力発見を地下からサポート
たむじょー:東京マラソンは、「東京がひとつになる日。」というコンセプトがありますが、東京メトロではどんなイベントだと考えていますか。
肥田野:東京マラソンは、東京の魅力を発見していただくイベントだと思います。コースに沿って歩くだけでも、江戸時代の旧跡や歴史的な建造物を知るきっかけにもなります。また、新しいビルや街の再開発など、進化し続ける東京の発見にもつながるのではないでしょうか。東京メトロはそうした数多くの発見を、地下から支え、ご案内するのが役目です。
たむじょー:東京マラソンは世界6大マラソン大会の一つなので、世界中からも注目されていますよね。僕は東京生まれなので、慣れ親しんでいる東京の街を走るのが楽しみです。東京メトロでは、いつ頃から東京マラソンに向けて準備を始めていますか。
肥田野:開催の数か月前から一般財団法人東京マラソン財団と東京メトロ本社が話し合って駅社員の増員などを計画し始めます。大会当日は多くの応援する方が来駅されることに備え、駅社員を増員して体制を整えます。また、コースに近い出口の案内や、東京マラソンの観客でない方が地上の交通規制によって迷われた際の誘導を行うための動線把握も重要です。後は海外からお越しのお客様に対する多言語対応もできるように、各自が業務用の携帯端末の翻訳機能を使って案内できるように準備しています。
たむじょー:本当にいろんな準備をして大会当日を迎えているのですね。翻訳機能を利用することで、海外からお越しのお客様もすごく安心できますね!
僕はこれまでいろんな大会を経験してきましたが、東京マラソンは応援する方が3列に重なるくらい人が多いですよね。僕も沿道から「たむじょー!」と名前を呼んで応援してもらうと力が出ます!
肥田野:ちなみに、複数のポイントで応援したい方には東京メトロ24時間券がおすすめです。当日券と前売り券があり、どちらも24時間東京メトロが乗り放題で600円(小児300円)です。初乗りが180円なので、4回以上乗っていただけるとお得になります。
たむじょー:かなり安いですよね。僕が沿道で応援したときは24時間券の存在を知りませんでした。活用していればお得だったのに(泣)。
肥田野:24時間利用できるので、翌日の出勤や応援後の観光にも使えますよ!他にも駅をご利用のお客様からランナーに向けて応援メッセージをいただいて当日に掲示するなど、多くの方が応援を楽しめる取組みを行っています。
たむじょー:僕が東京マラソンを走るにあたって、多くの友だちやYouTubeのコミュニティの方たちが応援に来てくれます。東京メトロに乗って何ポイントも見に来てくれると思うので楽しみです。それも東京メトロの入念な準備と当日の臨機応変な対応、セイコータイミングチームの正確な計時計測があってのことだと実感できました。この感謝の気持ちを持って当日は走りたいと思います!
【教えて!東京マラソンのギモン】
Q. 東京マラソン当日には、駅社員にどんな質問が多く寄せられるの?
A. 一番多いのはトイレの案内です。後はランナーがどこを走っているのか、応援ポイントに到達するためにはどのルートを行けばいいのかなどの質問もお受けします。当日の移動に困ることがないように、東京メトロとしても万全の準備を整えています。
Q. 東京マラソン用に、東京メトロで特別感を演出した取組みはあるの?
A. 大会当日にオリジナルの法被を着た駅社員を配置しています。東京マラソン2023では5駅で実施し、東京マラソン2024はもう少し駅数を増やす予定です。大会当日に法被姿の駅社員を発見できるかどうかお楽しみに!
文:田中凌平 写真:落合直哉
※記事の内容は2024年2月の取材時点のものです。