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【特集Vol.13】つながって、ひとつになる。安全・安定運行を支える陰の立役者。

東京メトロの総路線距離は195.0km。9路線、180駅があり、そのすべてを一元管理し、お客様の安全や安定運行を支えているのが総合指令所です。指令所内には、運輸・車両・施設・電力の4指令と情報・営業(駅)の2担当の各部門のプロフェッショナルが一堂に揃い、リアルタイムな情報や状況を共有し、駅や列車運行を見守っています。
総合指令所というと、名前は聞いたことあるけれど、何をやっているのか、どんなときに動くのかなどわからないという方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、普段の駅や列車運行の中で総合指令所がどう関わっているのか、運輸副指令の境谷さんと情報担当の千木良さんに話を聞きました。


正確かつタイムリーに
情報を把握・発信する司令塔


鉄道本部 運転部 総合指令所 情報担当/千木良 耕治(写真左)
運輸副指令/境谷 真一(写真右)

境谷:運輸指令としての主な業務は、ダイヤ乱れ時の運転整理や事故発生時の処理・指令ですね。指令所内にあるモニターに映し出される各路線の運行状況を見て、自分が担当する路線に遅れが発生している列車があれば、運行管理システムを操作して列車の運行を調整します。日常では混雑による遅延などがあり、たとえば定時で走行する先行列車に対し、後続の列車に遅れが発生すると、後続の列車にお客様が集中してしまいます。この混雑によって遅延がさらに拡大することのないよう、各列車の運転間隔を調整して等間隔で走らせるよう乗務員に指示します。
最近では、お客様も新型コロナウイルス感染症拡大前の水準に戻りつつあるので、朝夕のラッシュ時や土休日の昼間は混雑による遅延が発生しやすくなっています。モニターの運行状況から目が離せないのはもちろん、いつ何が起こるかわからないのでモニターへの意識が途切れることはありません。ですから、終業時には力尽きている……なんていうこともしょっちゅうですね。

千木良:私は情報担当なので、お客様への運行情報の配信が主な業務です。自社路線や他社路線で発生した事故や遅延などの運行に関する情報を運輸指令から収集し、駅や車内のサイネージ、東京メトロのホームページ、X(旧Twitter)を通じて、何時何分、どこの駅で、どんな事象が起きたのかを第一報で発信、さらには運転再開見込み時間や振替輸送の情報などもお伝えしています。私たちの発信する情報は、お客様が真っ先に必要とされる情報でもあります。正確さとスピード、求められるのはその両方です。時間を優先することで正確性が損なわれることなどないよう、発信する情報は上司と相互に確認しています。

先ほど境谷さんも言っていましたが、予測できない難しさが列車運行にあります。常に緊張感を持ち、タイムリーに対応する心構えでいますが、やはり大きなトラブルがない日は穏やかな気持ちになりますね。ただ「何もなくて平和だね」と口にすると逆に何かが起こってしまいそうなので、心の中で無事に1日が終わるよう祈っています。

境谷:そうですね。私の場合は、自分がその日担当している路線だけでなく、別の運輸指令が担当する路線でトラブルが起これば応援に駆けつけることもあります。望むのは東京メトロのすべての路線が平和であることですね。

鳴り響く列車無線の着信音、
求められる冷静な判断力


境谷:どんなに穏やかな状況も、1本の列車無線・電話によって指令所内はピンと張り詰めた空気に一変します。列車無線・電話を通して運輸指令のもとに入るのは、運転士や駅からの事故発生や車両・設備故障などの一報。私が状況を確認していると、各指令・担当が背後に駆け寄り、列車無線・電話の声に耳を研ぎ澄ましながら、息を呑むようにすべての目線がモニターに集中します。それは、背中越しに視線を感じるほど。しかし、こうして各指令・担当が同じタイミングで同じ情報を共有することで、初動のスピードは大きく変わります。

一報を受けた後の指令所は、まさに騒然とした雰囲気に。そんな中、運輸指令の私に求められるのは、現場となる駅や運転士と連携を図り、対応の指示を的確に出すことです。たとえば車両故障が発生した場合、専用の電話で駅に連絡してお客様へのご案内・対応にあたる駅係員を手配しつつ、故障処置の対応について車両指令にアドバイスを求め、運転士に列車無線で伝えます。故障から復旧した後は、運転再開できることを指令所内すべての指令・担当に共有します。
運輸指令は言わば、情報をつなぐパイプのようなもの。駅や運転士からトラブルに関する情報を聞き取り、総合指令所内にいる各部門のプロフェッショナルに情報を連携。現場と指令所それぞれに適時的確に情報を共有し、早期復旧や運転再開に向けて力を合わせて対応します。

千木良:第一報を受けた後は、情報担当として重要なのは現状の把握です。まずは、列車が動けるのか、動けないのか。列車が動けず全線運転見合わせになるようであれば運転見合わせをお客様に伝える文言を作らなければなりませんし、折返し運転や振替輸送を行うのか、運転再開はいつになるのか……お客様に発信すべき情報は主に境谷さんをはじめとする運輸指令から入ってきます。
あらゆる情報を集め、その中から必要な情報を見極めなければならないが、時間をかけすぎてはお客様にご迷惑をおかけしてしまう。指令所内に錯綜する声に煽られ、時間に追われて焦ってしまうことも。しかし、正確な情報を届けるためには、自分がパニックにならないよう冷静になることが大事ですし、ときには仲間たちが焦っていれば「落ち着いて」「確実にね」と声をかけるようにしています。

境谷:総合指令所でトラブルに対して先頭に立つのは運輸指令です。正直プレッシャーもありますし、判断に迷ってしまうこともあります。そんなときは自分一人で決めないで、先輩・上司や同じ運輸指令の仲間に相談します。さまざまな経験をもとに、車両故障の状況やその時々のトラブルの状況を踏まえて的確にアドバイスをくれるので、本当に頼もしいですね。

人と人とのつながりが、総合力を生み出す


千木良:安全・安定運行のためには、総合指令所というその名にあるように“総合力”が欠かせません。各部門のプロフェッショナルが指令所内に集結していますが、一人ひとりがパズルのピースのようなもの。私自身、車両のこと、設備のこと、電力のこと、知らないことはまだまだあります。しかし、お互いに持っている経験やスキルがつながることで、大きなひとつの力になります。

とくにトラブル発生時は、総合力を発揮するためにも、コミュニケーションの大切さを感じますね。緊張が走る指令所内はどこか話しかけづらい雰囲気にもなりますが、分からないことを聞いたり相談しやすい関係でないと、最善の対応なのか不安を残してしまうこともあります。そのために私自身も日頃から、車両指令に車両のことを、電力指令には停電時の対応などを聞いたりして、何気なく話しかけることでコミュニケーションを図るようにしています。ときには職場の外に出て、総合指令所メンバーで定期的にレクリエーションをすることも。そういう場で気軽に話すことで、部門を超えてつながるきっかけにもなっていました。

境谷:部門間の連携を図るため、私は「チーム指令所ミーティング」に参加しています。指令経験2年目という私と同じように、経験の浅い指令員が集まって素朴な疑問をぶつけ合う場ですね。どんな業務を担当しているのか、どんな仕事のルーティンがあるのか。お互いを知ることができるので、距離もグッと近づきます。メンバーの中には、実は意外な趣味や特技を持っている人もいて、会話が弾み、盛り上がることも多々あります。

その先にいるお客様のため、
平常運行を目指し続ける


境谷:お客様にご迷惑をおかけしてしまうようなトラブルは前触れもなく訪れ、100回事象が発生すれば、100通りの対応方法があります。私は先輩から「ダイヤは生き物だ」と教わりました。その生き物のようなダイヤをいつも通りの運行に戻すことが、安全・安定運行を守る私たちの使命です。
総合指令所は直接お客様の目に触れない部署ですが、私たちの業務の先にお客様がいらっしゃることを忘れたことはありません。常に心に刻みながら、経験を重ねる中で身につけてきた、時間調整や遅延を最小限にするためのスキルを活かし、これからも安全・安定運行を陰で支えていきます。

千木良:総合指令所は首都東京の足を支える司令塔のようなもので、常に緊張感がつきまとう部署でもあります。私自身、今日まで18年間総合指令所にいるからこそ、所員たちがプレッシャーと戦う厳しさも肌で感じてきています。だからこそ、ねぎらいの言葉をかけたり、気持ちを切り替えられる休憩が取れるような職場をこれからも作っていきたいです。
総合指令所の業務は一人ではできません。トラブル発生時には息を合わせて対応し、互いに助け合えるよう、所員のチームワークをもっと高められるよう尽力していきたい。そしてお客様のため、平常運行をずっと目指し続けていきます。


【教えて!総合指令所のギモン】

Q. 総合指令所には何人くらいの人が勤務しているの?

A. 総合指令所はおよそ140名の所員で構成されています。
そのうち、1日の宿泊勤務を行う4指令2担当はおよそ35名。8:00〜翌8:00まで24時間体制の交代勤務で業務にあたっています。

Q. 指令所内にはどんな設備があるの?

A. 列車運行管理装置(PTC)、運行状況を表示するモニター(プロジェクタ)、地震計、風速計、河川水位監視盤、WebサイトやX(旧Twitter)への情報を配信する装置、各駅を監視するセキュリティカメラ、東京消防庁や警視庁とのホットラインなどが備えられています。


※記事の内容は2023年11月の取材時点のものです。

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